<海の生物シリーズ Part29>
株式会社エコニクス 環境事業部
泊担当チーム 塚本 春香
タイトルから何の話をするか想像できましたか?皆さんの頭に浮かんでいるもの…綺麗な色で柔らかい身体,おっとりと無防備に見えるナメクジに似たその生物…今回はウミウシ・アメフラシの話です。
先に答えを出してしまいましたが,ウミウシ・アメフラシは腹足綱に分類される巻貝の仲間です。脱いだ貝殻を身体の中にわずかに残している者もいます。その種類は解っているだけで3000種。種類があまりに多いので一概には言えませんが,大半のウミウシはカイメンや仲間のウミウシを食べてしまう肉食系,アメフラシは主に海藻類を食している草食系です。
貝殻という外敵から身を守る術を放棄した彼らは体内に毒を溜め込んだり,攻撃物質を吐き出したり,派手な色で“食べるなよ”,とアピールしたりと様々な技で自身を守っています。殻を手放したことで得た技のおかげで,貝殻内の引きこもり生活から解放され,悠悠自適な生活を送っているようにも見受けられます。
体内に毒素を持っているなんて凄いなぁと思いますが,彼ら自らが生成しているわけではないのです。一例として,アメフラシが外敵の忌避物質として使用している”含ハロゲン化合物”という化学物質は、餌の紅藻である”ソゾ”がウニやアワビ等の生物に食べられないように生成している物質で,抗菌作用も有しています。”ソゾ”が自身を守る為に必死で生成した物なのに,それを餌として難なく摂取して体内に蓄積し,自分の物として使用しているアメフラシ。ちゃっかりものですが,憎めない可愛らしさと賢さには感心させられます。
さらに彼らは雌雄同体で雌雄の生殖器を両方持っているため、数尾で連なって交尾をしている様子が見られる事もあります。そして産卵期は春~夏(5~8月)。ちょうど今時期,海に潜ると岩やホヤに産み付けられたらせん状やリボン状,モンブラン状の白い卵が見つかります。海に潜る機会があったら,注意して周りを観察してみて下さい。
【最後に】
今回の撮影ポイントは積丹半島の神恵内村沿岸海域です。雪もすっかり溶けて緑が豊かな情景には心洗われるものがあります。札幌から少し足を延ばして神恵内村に遊びに出掛けてみてはいかがでしょうか?良い釣り場や温泉,夕陽の綺麗な絶景ポイントは,日頃の疲れやストレスを飛ばしてくれること間違いなしです。
<参考資料>
“地球にひとつの生命 海の小さな人気者ウミウシ”.NATIONAL GEOGRAPHI日本版.
<http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0808/feature04/index.shtml >
“ウミウシって? What’s sea slugs”.Sea-slug.com.
<http://www.sea-slug.com/index.html>
阿部剛史“日本海は進化のゆりかご-海藻と貝形虫-”道民カレッジ連携講座(2016年1月9日実施)